市立の中学校の教員なのですが、校長からサッカー部の顧問をするよう命令され、毎日午後7時ごろまで勤務し、土日にも練習の立会いや試合の引率をしています。市に対して残業代を請求することはできないでしょうか。

給特法により、公立の中学校の教員には時間外勤務手当、いわゆる残業代は支払われません。これは、校長による職務命令が超勤4項目の要件を満たさない違法なものであった場合でも同様です。ただし、校長が給特法の趣旨を没却するような長時間の時間外勤務を命じた場合には、損害賠償請求が認められる可能性があります。

補足説明

公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(以下「給特法」といいます。)は、公立の幼稚園から高校までの学校の教員に対して幅広く適用される法律であり、地方公務員法に対する例外、労働基準法に対する例外などを定めています。市立の中学校の教員の場合には、給特法の適用対象となります。

給特法5条により読み替えられる地方公務員法58条3項によって、公立学校の教員には、時間外、深夜、休日の割増賃金(いわゆる残業代)の支払義務を定める労働基準法37条が適用されませんので、公立学校の教員には時間外等の賃金の請求権が発生しません。したがって、市立の中学校の教員が、法定労働時間を超えて労働(時間外労働)をしたり、法定休日に労働(休日労働)をしたりしても、これに対する残業代の請求ができないということになります。

ところで、給特法6条、公立の義務教育諸学校等の教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合等の基準を定める政令(以下単に「政令」といいます。)2号により、教員に時間外勤務を命ずることができるのは、①校外実習その他生徒の実習に関する業務、②修学旅行その他学校の行事に関する業務、③職員会議に関する業務、④非常災害の場合、児童又は生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合その他やむを得ない場合に必要な業務(①ないし④を「超勤4項目」といいます。)のいずれかに従事する場合であって、かつ、臨時又は緊急のやむを得ない必要がある場合、に限られています。しかし、部活に関する業務は、超勤4項目に含まれませんので、教員に対し、部活への従事を理由に時間外勤務を命じることはできません。

上記の意味において、校長によるサッカー部の顧問をせよとの命令は、超勤4項目に当たらない違法な職務命令である可能性があります。ただし、裁判例では、違法な職務命令であったとしても、給特法5条により、労働基準法37条の適用が排除されている以上、いわゆる残業代は発生する余地がないとされています。もっとも、給特法の趣旨を没却するような長時間の時間外勤務を命じた場合には、残業代としてではなく損害賠償として金銭の支払いを求めることは認めています。

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